古事記の「神宝」:宮崎の鵜戸神宮が戦後初公開へ
毎日新聞 2012年10月30日 14時30分(最終更新 10月30日 14時38分)
鵜戸神宮が神宝として保管し、特別に公開する「潮満珠」(右)と「潮涸珠」=百武信幸撮影
鵜戸神宮が神宝として保管し、特別に公開する「潮満珠」(右)と「潮涸珠」=百武信幸撮影
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日向灘に面する観光名所、宮崎県日南市の鵜戸神宮が、古事記編さん1300年を記念し、来月3、4の両日、古事記にも登場する神宝「潮満珠(しおみつたま)」「潮涸珠(しおふるたま)」を戦後初めて一般公開する。潮の満ち引きを操る玉とされ、本部雅裕宮司(61)は「本殿は過去の津波で大きな被害を受けたことがなく、鵜戸神宮にとって御利益のある大切な玉。ぜひ見に来てほしい」と話す。
「潮満珠」は丸い水晶型、「潮涸珠」は大きさの違う円柱を4段重ねた形で約5〜7センチ。古事記には、初代天皇(神武天皇)の祖父に当たるホオリ(山幸彦)が海の神様ワタツミから授かり、釣り針を巡ってけんかした兄のホデリ(海幸彦)を「潮満珠」でおぼれさせた後、「潮涸珠」で助けてひざまずかせたと書かれている。
鵜戸神宮によると、70年の社務所の火災で記録が焼失し、神宝をいつから保管しているかは不明だが、同神宮の明治9年の「御神宝台帳」に記録があるという。盗難に遭わないよう、本部宮司も歴代宮司からの引き継ぎを守り厳重に保管。少なくとも戦後は一般公開したことがなく、同神社関係者にもほとんど見せていないという。
公開は、3日は正午から、4日は午前9時からで、いずれも午後4時まで。本殿で拝観券を配布する(無料)。このほか戦後の混乱期に消失し、昨年、日本屈指の刀鍛冶が記録を基に復元した「鵜ノ丸(うのまる)太刀」も初公開される。本部宮司は「次はいつ公開するかわからない。古事記の場面に思いをはせ、古事記を見直すきっかけにしてほしい」と話している。
鵜戸神宮の神宝については、さまざまな逸話がある。宮崎県が県内の神話・伝説を集めた「ひむか神話街道50の物語集」(04年発行)には、泥棒が玉や太刀、岩笛などの神宝から「銀のつえ」に目をつけて持ち出したところ、つえが熱を放ち出し、泣く泣く元に戻したという伝説も掲載されている。【百武信幸】